「OKNetからインターネットへ」

(学校インターネット事業修了報告 2004/3 より) 

1.研究のねらい

 (1)総合的な学習の時間での、学び方の指導とあわせた児童の情報活用能力の育成
 (2)国語科での指導とあわせた、伝え合う力や表現力の育成
 (3)情報社会で生きるための、正しい判断力と情報モラルの育成

2.研究の経緯

(1)校内LANの確立を目指し、サーバー上に児童用HP「OKNet」を設置する。
(2)OKNetを活用し、ネットワークの基礎的活用をはかる。その中で、インターネットでの情報収集の出発点としての利用やOKNet内での情報発信を体験させる。
(3)インターネット上の学校HPの掲示板システムを活用して、児童の情報発信や協力校や外部講師の方との交流をすすめる。
(4)OKNetとインターネットの共通点と相違点やそこでの発信体験を教材として、個人情報・肖像権・著作権・インターネットの影の部分等情報モラルについての学習をすすめる。

3.研究の内容

(1)ネットワークメディアの中心としての「OKNet (Oyama Kodomo Network)」

 校内LANを活用して、児童がすべての学習や活動の中で情報活用能力を伸ばす基礎的な活用を図っている。OKNetは、その中に設置しているHPである。学年のページ、学習リンク集、検索のページ、子ども掲示板等を設置して、コンピュータ・ネットワークを活用した学習の出発点として児童の利用を進めている。

(2)調べ学習をすすめる学習リンク…情報の収集・選択・活用

 児童一人一人が自分の学習課題に基づいて、インターネット上の情報を検索し、情報の収集分析を実際におこなうことも大切であるが、現実に1時間をかけてあちこちのHPをさがしたが何も見つけることができずに終わってしまった、ということもある。まず基本的な情報に出会わせ、さらに深く追究する際に検索などに取り組ませることが時間的にも有効であると考える。そのために、学年の学習リンクを作成し情報の収集についての支援をおこなっている。
 高学年の社会科で使用している資料集や最近発刊されている図鑑や百科事典には、内容に関連するURLが掲載されており、授業を出発点としてインターネットによる学習の広がりや深まりを作り出すことができる。低学年向けには、「どうぶつえんにいこう!」「めざせ虫虫はかせ!」といったアピールをしながら自然にインターネット上の情報へ導く工夫をおこなっている。
 インターネット上の子ども向け検索ページも充実してきており、子どもたちの主体的な情報収集・選択・活用に取り組んでいる。

(3)校内児童用ネットワークを活用し収集した情報を交流し共有しあう。(子ども掲示板)

 校内児童用ネットワーク(OKNet)のHPにCGIプログラムを利用した画像掲示板を設置し、児童がデジタルカメラを中心に学習活動内で収集した情報を表現・交流する場として活用をしている。
児童がHPを作成しようとするとリンクの設定などが必要になるが、画像掲示板では少しの文字入力と画像ファイルを指定することでアップロードすることができ、またそれをすぐにHP上で確認することもできる。
 5年生環境探検隊では、「川のよごれ調査」をおこなった児童が川の実態や自分の意見を発信する場として活用した。また4年生は、学校内や地域にあるバリアフリーの施設をデジタルカメラで撮影し、施設の意味について考えあったり、子ども掲示板で全校へ発信し交流しあった。
 6年生算数科「資料の調べ方」では、「すきな学習」「くだものアンケート」などグループに分かれテーマを決めて情報収集に取り組んだ。アンケート用紙を配布して全校児童へアンケートを実施するグループに加えて、「ネットでアンケート」としてOKNetにアンケートを設置し、児童自らが考えた項目を登録し全校へアンケートへの参加を呼びかけて取り組んだ。学習を通して様々な方法を体験し交流していきそれぞれのメディアの特徴をつかむことができた。

(4)学習活動の成果や情報を蓄積・発信

 3年は、学びあいタイム「そだてよう いのち」の学習のまとめを製本し、図書館へ置いて自分たちの学びを全校へ発信している。
 昨年度6年は、学びあいタイム「小山の歴史物語」で自分たちが調べた先人たちの歩みや歴史、現在も残っている遺跡等についてスタディノートを使ってまとめ、それを二小HPで公開・発信をおこなっている。
 このように、子どもたちの学習活動の成果を学年段階での指導をふまえ多様な形態で、大切な情報として蓄積し広く発信をしている。そしてこれらは、今後の学習のきっかけとなったり、意欲を高め学習の見通しを持ったりさらに高度な学習へと導く教材・情報として役立つことになる。
 5年国語科「ニュースを発信しよう」の学習で、発信の手段・方法として新聞・ビデオを使ったテレビ放送等を学習し体験した子どもたちは、その後児童会の活動の呼びかけをテレビ放送を通じて全校へおこなってきた。ニュースを伝えるポイント、はっきりとした話し方、その際の表情などを意識し自分たちの考えをしっかりと伝えられるよう工夫をおこなってきた。そのデータ(ビデオでの動画)をOKNet上の情報として保存し、取り出せる状態にしている。

(5)1年のコンピュータ・ネットワークとの出会いと情報の蓄積

 インターネットを活用して情報を収集することだけでなく、自分たちの情報を蓄積する手段としてネットワークを活用しているが、これは低学年でのコンピュータとの出会いの場面から大切にしてきている。
 1年生の子どもたちがコンピュータに最初にふれたときに出てくる情報が自分や学級の友達の笑顔であり、はじめて作った図工科での作品であった時、コンピュータが身近なものになり自分たちの大切な情報を保存したり取り出すことができることを体験的に身につけていくものと考える。
 OKNetの「1年生の部屋」には、「すきなものなあに」のコーナーがあり、コンピュータの導入の学習の教材として活用している。「きょうは、こんぴゅーたのおべんきょうだよ」と聞いてわくわくしていた子どもたちが、マウスの使い方を身につけはじめて画面をクリックし、たくさんの笑顔が出てきたとき、教室は子どもたちの喜びいっぱいの声であふれていた。

(6)二小HPでの発信と個人情報や情報モラルの学習

 5年生は、6月におこなった「るり渓合宿」の活動内容・思い出等の情報を校内ネットワーク「OKNet」のHP上の児童掲示板で発信した。これまで作文の形で表現していた内容を画像をあわせた表現をして発信できると共に、ネットワーク型のメディアの双方向の特徴を生かして感想を付け加えたり交流する学習を進めることができた。
 「みんなのるり渓日記」と題したこの学習を通して発信することの楽しさ喜びを味わった子どもたちは、「OKNetからインターネットへ」発信をしようと気持ちが広がっていった。この中で、OKNetとインターネットの違い・個人情報の扱いについて、情報を発信する際の基本的なモラル等についての学習をすすめた。
 子どもたちの学習活動の成果を広く発信することにより、様々な観点からの評価を受けることも可能になる。二小HPを訪れる方達の中には、「園部町 昔話」「京都 古墳」「小出良親」等の検索の結果によって二小HPを訪れている方達も少なくないのである。
 自分たちの学習の成果を自信をもって発信すること、一方でその内容について責任を持たなければならないこと、また他の方たちの著作権等について配慮しなければならないことへと学習をすすめ、情報についての正しい見方や考え方を身につけた子どもたちを育てなければならない。


4.研究の評価・課題

(1)総合的な学習の時間・教科での学習や日常的な全ての学校生活で、児童が主体的な学習・活動を進める上で必要な手段としての活用が図られている。
(2)情報モラル等の学習をふまえ、相手を意識し、大切にした情報発信の態度が育ってきている。

 

5.まとめ

 社会の情報化が進み、多様で大量な情報の中から、必要なときに必要な情報を収集し活用する能力が求められている。学校教育においても、児童が自らの興味・関心に基づき主体的に学び、問題解決能力を育むためには、これらの情報活用能力を育成することが重要な課題である。

◇図鑑・百科事典を使い、ヒトの体のつくりについて調べている子どもたち。
◇VODを使いビデオを視聴して疑問を解決している子どもたち。
◇インターネットを使い「体の仕組み」「呼吸」で検索し、より専門的な知識をホームページから得ている子どもたち。

 これは、ある日の図書館・コンピュータ教室の様子である。6年理科「ヒトや動物の体」の学習で、子どもたちはそれぞれが持った学習課題に対して、図書館・コンピュータ教室で最も有効な手段を選択し、情報を得て学習課題に向かうという学習がごく自然な形でおこなわれている。

 このように、子どもたちが自分たちの学習に対して、必要な情報・メディアが準備され、それを活用した学び方を身につけた子どもたちが育ってきている。図書館教育とあわせた実践研究をさらに進めたい。


◇図鑑・百科事典


◇VOD


◇インターネット